アクリル樹脂とプラスチックの歴史
アクリル樹脂は、プラスチック素材の発展から生まれた高機能プラスチック素材の1つです。
そのアクリル樹脂にはどのような歴史があるのでしょうか。
プラスチック素材の誕生から現在までの歴史を振り返ってみましょう。
まず、プラスチックは、高分子(ポリマー)と呼ばれる長く連結した鎖状の分子が主成分でできていますが、この高分子の正体は、1926年にドイツのスタウディンガーによって発見されました。
高分子が発見される前のプラスチックの前身の一つに、「シェラック」と呼ばれるアカシヤの木に寄生する昆虫から抽出された天然樹脂の一種が、工業材料としてレコード盤に用いられていたという歴史があります。
その後のプラスチックの歴史としては、ポリ塩化ビニルが1835年にフランスのルノーによって、ポリスチレンが1839年にドイツのジモンによって発明されています。
1870年に、アメリカの印刷工ハイアットによって偶然発見されたセルロイド(半合成プラスチック)が、硝化綿に樟脳を加えることによって成形できるようになり、実用プラスチックとして工業化されました。
セルロイドの出現は、それまで象牙で作られていたビリヤードの球に代用され象牙不足を解消し、さらに、1889年にはイーストマン・コダック社によって映画用フィルムとして使用されるようになりました。
1872年に、ドイツのバイエルによって発明されたフェノール樹脂は、アメリカ科学者であるベークランドが、1909年にフェノール樹脂を工業化し、カメラや電話機等に活用され「ベークライト」という名前で広まりました。
他にも、1911年にはアルキド樹脂、1917年には酢酸セルロース(不燃セルロイド)、1920年にはユリヤ樹脂、1930年にはポリスチレンが工業化されています。
そして、1934年にアクリル樹脂が工業化され、元々ガラスのような透明性を持っていることから、当時は「有機ガラス」や「風防ガラス」、刷り上げると独特の臭いを発することから、「匂いガラス」とも呼ばれていました。
見通しの良い透明性と、高い耐久性や耐候性を持っていることから、軍事用に利用が開始され、戦闘機等の風防(キャノピー)に使用が開始されだしたのもこの頃です。
当初はこのような軍事関連での利用が中心でしたが、現在では様々な製品に利用されていて、固体として成形される以外にも、絵の具や接着剤、塗料等にも使われています。
その後、1938年にナイロンが工業化され、1958年にはポリカーボネートが開発されており、第二次世界大戦後から、ポリ塩化ビニルやポリエチレン、ポリスチレンやベークライト等が生活の中に登場し始め、現在に至るまで、プラスチックは生活に欠かせない素材の1つとなりました。